個人M&Aではなく起業を選択した事例|本気で取り組んだからこそ起業に自信を持てた
鉄鋼製品を扱う大手商社で法人営業や投資案件などに携わってきた新開さんは「自分で意思決定し、自分で全ての責任を負う形で働きたい」と考え、個人M&Aに臨みました。そして、複数の会社と本格的な交渉を進めましたが、最終的には個人M&Aではなく、ゼロから起業する選択を行いました。
「個人M&Aに本気で取り組んだからこそ、起業という選択にたどり着いた」と語る新開さん。
今回の記事では、新開さんのM&Aの取り組みを時系列に沿って紹介します。個人M&Aという選択肢が自分に合っているのかどうかに悩んでいる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
【目次】
大手商社で法人営業や再編業務、投資案件を経験|「自分の意思決定でビジネスを進めたい」と考え、個人M&Aに挑戦
―はじめに、ご経歴について教えてください。
新開さん
私は、鉄鋼製品を扱う商社で法人営業や事業投資先管理、新規投資案件などに携わってきました。全国に拠点のあるグループ企業への出向や海外貿易業務にも従事し、さまざまな角度からビジネスを形成して成長させる工程を経験しました。特に大型投資案件におけるプロジェクトマネジメントの経験はとても貴重なものでした。
―そうした中でM&Aに関心を持ったのはどのようなタイミングでしたか?
新開さん
2010年頃から新聞やニュース、書籍で事業承継の話を目にするなかで、30代や40代で事業を取得して経営者になるという選択肢の存在を知り、いつかは自分も挑戦してみたいと考えていました。前述の投資案件が一段落したところで、新しい環境へ飛び出すことを決めましたが、当時自分には「転職、M&A、ゼロからの起業」の3つの選択肢があると考えていました。転職活動からスタートして、内定もいただきましたが、悩んだ結果、ここで転職を選択しても、M&Aや起業への挑戦を単に先送りすることになると考え、前職での経験もある程度活かせる個人でのM&Aに先ずは挑戦しようと決めました。
―どのような経緯でM&Acompassを知りましたか?
新開さん
前職では、社内の法務、経理財務、人事といった各分野のエキスパートや、弁護士や公認会計士をはじめとするさまざまな専門家と連携して業務を進めていましたが、「知識の少ない領域でプロジェクトを進める際には、自ら勉強するだけではなく、専門家にチームに入ってもらうことが効率的で安全」と実感していました。その経験から、個人でM&Aを進める際には、自分が想定しきれないようなことへの対応として、専門家に伴走をしてもらおうと考えていました。
このように専門家を探していたタイミングで、M&Aプラットフォーム「BATONZ」に掲載されているM&Acompassのセミナーに参加しました。その後、M&Acompassの無料体験会に参加し、M&Aコンサルタントの方からお話を聞き、M&Acompassが提供しているサービスは、私が求めているものと一致すると感じました。
個人でM&Aを進める場合、案件精査をどのように進めるか、売り手さんとどのようにやりとりすべきか、DD(デューデリジェンス)の範囲や進め方をどのように決めるべきかなど、さまざまな対応事項があり、外注も内容によっては可能ですが、私はとくに初回案件に関しては、外注せず自分で一通り対応しようと考えていたので、伴走型でこれらの点を支援してくれるM&Acompassは心強いサービスでした。
貿易事業や幼児教育事業などを検討|前職の経験や問題意識から案件を検討
―最初はどのような案件を探していましたか?
新開さん
はじめは、次の3つの事業を中心に検討しました。
輸出入事業、物品販売事業
保育所および託児所運営事業
幼児教育事業
私の前職での営業経験を活かすことができ、日頃から考えていた問題意識の解決につながるという観点から、これらの事業を選びました。また、この時点では、取り組みたいビジネスモデルが具体的に固まりきっていなかったこともあり、M&Acompassのコンサルタントからも「はじめは、業種や規模をしぼり過ぎずに案件を検討した方が良い」とアドバイスをもらっていたため、周辺に広がるビジネスも含めて多くの案件を検討しました。ただやはりその後、これまでのキャリアを活かすという観点から輸出入事業及び物品販売事業に絞り、M&Aプラットフォームに掲載されている案件を徹底的に隅々まで閲覧しました。赤字案件も、「背景次第では黒字転換できる可能性があるかもしれない」と考え、内容の精査は進めました。
―実名交渉や売り手との面談を進めた印象はいかがでしたか?
新開さん
最初に痛感したのは、案件によって、売り手から提供される情報の信頼性に大きな差があるということでした。例えば、M&Aプラットフォームに掲載されている情報が実際に調査してみると事実と異なるというケースもありましたし、財務諸表の辻褄やコスト構造がどうしても腹落ちしないケースもありました。そのため、提供される情報は決して鵜吞みにせずに、一つ一つ慎重かつ丁寧に精査しなければならないこと、また、大手のM&Aプラットフォームに掲載されているからと言って、そのプラットフォームが案件の信頼性を担保することはないということを、振り返れば当たり前のことですが、身をもって痛感しました。
―実名交渉以降のプロセスに進み、本格的な交渉を行った案件はいくつあったのでしょうか?
新開さん
実名交渉以降のプロセスを本格的に進めた案件は3つでした。そのうちの1件目は、情報のやり取りがスムーズに進まず、私からお断りさせていただきました。2件目も、売り手側のM&Aアドバイザーによる交渉の進め方や相手方フォーマットの契約書内容について、歩み寄りが難しく、1件目と同様に私から見送りの連絡をしました。
3件目は輸入貿易・EC物販案件で、売り主さんもM&Aアドバイザーも非常に丁寧で信頼できる方だったため、DDのやり取りや質疑応答、M&A後の引継ぎやフォローアップ、買収価格の交渉も円滑に進みました。しかし、最終的には私側の事情により買収を取りやめました。
当時、私は買収資金には融資を活用しようと考えており、売り主さんから提供いただいた情報と、M&Acompassコンサルタントの方からもアドバイスをいただいて作成した事業計画を携えて、日本政策金融公庫へ相談にいきましたが、結果として融資可能額は、希望した金額には届かないものでした。
そのため、一度立ち止まり、自分が目指している事業は既存の事業を買収せずにゼロからの起業というかたちで行えないか?ということを、そのタイミングで再度熟考することとなりました。
交渉を進めていたその案件は魅力的でしたが、足掛け4カ月間、多くの候補案件に触れ、その都度「自分がその事業のオーナーだとしたら、どう経営していくか」をシミュレーションしたことで、自ずと自分が志向する事業モデルをより具体的にイメージすることができていたことから、先ずは自ら起業し、その事業をスケールさせるタイミングで、融資やM&Aを活用した方がいいのではないか、今の自分にはその方がストーリーとしてフィットするのではないかと考えました。
このような考えに至ったこともあり、3件目の案件の交渉を辞退し、自ら起業する道を選びました。
個人M&Aに本気で取り組んだからこそ起業という選択に自信を持てた
―M&Aの取り組みを振り返っていかがでしょうか?
新開さん
M&Acompassの支援を受けながら、M&Aに本気で取り組むことができて良かったと考えています。私の場合は、繰り返しになり恐縮ですが、候補案件に数多く触れる中で、「自分がその事業のオーナーだとしたら、どう経営していくか」について何度もシミュレーションを繰り返すことで、自分がやりたい、自分が目指す事業モデルをより具体的にすることができましたし、そのプロセスがあったからこそ、最終的に、先ずは自分で起業するという結論にたどりつけたと思います。
M&Acompassには心から感謝しています。特に案件評価シート(※1)のサービスはM&Aに役立ちました。対象案件のポイントを迅速に把握でき、M&Aの全体像を理解することにもつながったためです。案件検討時に私のなかにあった引っ掛かりを丁寧に解説してもらえた点も有意義でした。
またコンサルタントの方との定期的なミーティングに加え、メールでのやり取りは毎日おこなわせていただきました。いつも迅速に、専門家としてプロフェッショナルなレスポンスをいただけたのは有難かったです。
※1 案件評価シート:M&Aプラットフォームに掲載されている案件情報について、譲渡価格の相場や検討時の注意点をコメントバックするサービス
起業したビジネスを軌道に乗せる|そのうえでM&Aも利用しながら拡大を目指す
―この度は、M&Acompassをご利用いただきまして、ありがとうございました。新開さんの今後のビジョンを聞かせてください。
新開さん
ありがとうございます。今は起業したビジネスを軌道に乗せることしか考えていません。世界中から商品を仕入れ、それを必要としてくれるお客さまへ届けていきたいと思います。日本での輸入販売代理店として、国内における製品のブランディングも支援していきたいです。ステークホルダーの皆さまと腰を据えた関係を築いて、事業を拡大していきたいと考えています。
―最後に、個人でM&Aを成約させたいと考えている買い手の方にメッセージをお願いします。
新開さん
私は最終的にM&Aではなくゼロからの起業を選択しましたが、M&Aは、ビジネス拡大の有力な手段ですし、将来必ずどこかで検討することがあると思います。その意味で、今回の経験は非常に大きな、代えがたいものとなりました。
これから個人M&Aの成約を目指される方は、売り手さんから提供される情報を慎重に精査し、自らのビジョンや目的を達成できる案件を取得してほしいと思います。
―ありがとうございました!新開さんのビジネスの今後の発展を楽しみにしています!
「個人M&Aなら、M&Acompass」
M&Acompassは、個人M&Aの買い手に対する伴走支援です。これまでM&Aの専門家のサポートが十分に届いていなかった個人の買い手向けの伴走支援であり、個人M&Aの成約を目指すためのM&A戦略立案・案件探しといった初期的な工程からクロージングまでを支援するサービスです。
「M&Acompass」では、毎週さまざまなテーマでセミナーを開催しています。また、LINE公式アカウントでもM&Aに役立つ情報を配信しています。
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