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【個人M&A成功事例】有名サイダー店を承継|課題を解決により売上高5倍を実現

更新日:4月22日

公務員として約20年間務めた高畑さん(仮称)は、「人生100年時代、長く社会に貢献したい」という考えからM&Aに取り組みました。そして、地元で有名なサイダー屋さんを引き継ぐ形で、見事にM&Aを成功させました。


「地方企業の経営者の高齢化」「テレビで取り上げられるほど有名なのに後継者が見つからない理由」などの課題に直面しながら、自らの情熱と戦略的な分析に基づいて交渉を行い、取得後に売上高を約5倍に成長させた高畑さんのM&Aは、多くの個人の買い手の参考になる個人M&Aの成功事例です。


今回の記事では、インタビューさせていただいた内容をもとに、高畑さんのM&Aを時系列に沿って紹介します。対象事業の課題を解決するための戦略立案、取得後の新しい試みにも触れているので、最後まで読んでみてください。


公式LINE

公務員から経営者へ|社会貢献の思いから考え始めた個人M&A

公務員から経営者へ

―はじめに、ご経歴について教えてください。


高畑さん

私は、就職氷河期を経験した世代です。はじめは、飲食店に就職して1年半働きました。その後、公務員試験に合格し、市役所での勤務を開始しました。国民健康保険の給付に関する業務、県や市の観光業務、税務課での業務、市長秘書を中心に公務員として約20年間勤務しました。


―M&Aに関心を持ったのはどのようなタイミングでしたか?


高畑さん

公務員の先輩から、仕事を辞めてすぐに亡くなってしまう方がいるという話を聞いたこともあり、私は「人生100年時代、長く社会に貢献したい」と考えるようになりました。また、公務員として地域活性化に携わった経験もM&Aにつながっています。


私は地方の企業の経営者の高齢化を目の当たりにしてきました。「社長が高齢で店を畳んだ」という話もよく耳にしました。都会だと、一つの店が閉まると、すぐに次の店が開店しますが、地方の場合はそうはいきません。閉店した物件が空き家として残り続けるのです。こうした状況が続くと、いずれは住民の生活にも影響を及ぼすと感じました。


このように自らの考えと、地方に関する問題意識から「定年がない経営者になって社会に長く貢献しよう」という考えが芽生えたのがM&Aに関心を持つきっかけでした。


―ゼロからの起業やフランチャイズを利用した起業は検討しましたか?


高畑さん

それらの手法は検討しませんでした。「歴史のあるものを承継したい」と考えていたため、自然とM&Aを考えていました。当時は公務員として勤務していたため、隙間時間や休日を使ってバトンズなどのM&Aプラットフォームで案件を探していました。


長い業歴・後継者不在の案件を検討|地元でも有名なサイダー屋さんとの出会い

有名サイダー店との出会い

―はじめは、どのようなニーズに基づいて案件を検索していましたか?


高畑さん

ビジネスとして歴史があり、後継者がいない案件を中心に検索しました。業種やエリアで案件を限定することはしませんでしたが、私自身が専門的な技術を身に着けなければ承継できないものは避けました。このように案件探しを始めましたが、長い業歴を持つ会社や事業は決して多くありませんでした。そのため、当初は、M&Aプラットフォームに掲載される案件を淡々と確認し続けていました。


―そのような中で、この度取得したサイダー屋さんとの出会いがあったと伺っています。サイダー屋さんの案件に対する初期的な印象はどのようなものでしたか?


高畑さん

この度取得したサイダー屋さんは、まさにビジネスとして歴史があって、後継者不足に悩んでいる事業でした。案件の詳細を確認すると、私でも知っている地元で有名なサイダー屋さんだということがわかりました。テレビでも取り上げられるお店であり、お客さんも多いはずなのに「なぜ後継者が見つからないのだろうか?」と疑問を持ちました。


そして、実際に対象事業の詳細を一つひとつ確認していくと、後継者が見つからない理由がわかりました。それはシンプルに「経営が厳しかったから」です。当時は、月次の売上高が数十万円でした。店舗を訪れるお客さんは毎月1000人以上いましたが、顧客単価が低すぎたのです。卸の売上もありましたが、それでも経営を続けられる状況ではありませんでした。


一方で、売り手のオーナーさんは当時79歳でしたが、非常にエネルギッシュな方でした。80歳目前まで体を動かしながら働いてきた人の強さを目の当たりにし、人生100年時代を実感したことを覚えています。


―財務状況の厳しさは、案件取得のハードルになると思います。取得の時点で黒字化は予想できましたか?


高畑さん

当時は、「このお店がなくなってしまうのは勿体ない」という思いが根底にありました。売り手さんも80歳目前だったため、事業を譲渡するタイミングとしてもギリギリだったと思います。財務に関する不安はありましたが、課題は明白だったため、それを解決するイメージを持てるかどうかが重要でした。


交渉のなかで売り手さんから「味を守りたい」「お店の名前を残したい」という希望を聞いていたため、それらをふまえて、取得前から次の3点を整理しました。

  • なんのために会社/事業を存続させるのか

  • どうありたいのか

  • お客様にどのような価値を提供するのか

その過程で、「地域の宝を、地域の力に。」というビジョンを定め、どのような方法で顧客単価の課題を解決すべきか考えました。


最終的には、「風光明媚な土地で、昭和の体験を提供する」方向で、黒字化のイメージができました。そのため取得を決意しました。

案件概要|厳しい局面を乗り越えて、売上高5倍を達成

案件概要

―取得に際して、価格交渉はありましたか?


高畑さん

取得価格は非公開とさせていただいておりますが、交渉はありました。当初はビジネスのみを引き継ぐ想定でしたが、売り手さんと交渉し、最終的には土地建物も引き継ぐ条件で価格を決めました。私一人では支払うのが難しい価格だったため、公務員時代の同僚に共同出資してもらいました。


交渉期間に7カ月を要したのは、途中で緊急事態宣言があったためです。私にとっても、売り手さんにとってももどかしいタイミングはありましたが、丁寧にコミュニケーションを取っていたため、無事に成約に辿り着くことができました。本件は、私にも売り手さんにも専門知識がないなかでのM&Aだったため、M&Aアドバイザーの方が丁寧にアドバイスおよび調整してくれた点も成約に役立ったと感じます。


―取得してから、具体的にどのようにビジネスを引き継いだのでしょうか?

高畑さん

取得後の1カ月間は、これまでの製造方法と販売方法を覚えるために使いました。サイダーは、香味料・酸味料・甘味料を合わせたシロップと炭酸で作りますが、絶妙なバランスを覚えるのが大変でした。また、古い機械を使っているため、調整や修理によっても味が変わります。


一方で、顧客単価は早期に改善する必要があったため、新商品の開発にも力を入れました。当初は、サイダーの瓶を返却しなければならないシステムでしたが、取得後は瓶を返却せずに済む商品も開発しています。他にも、地元の農家や著名人とコラボレーションした商品を開発しました。


これらの新しい取り組みも「地域の宝を、地域の力に。」というビジョンに沿って行っています。ただ、取得後の経営には苦難もありました。新商品の開発などに投資したため、取得した初年度は約300万円の赤字でした。600万円あった運転資金が約20万円にまで減少した時期もあります。


しかし、ビジョンに沿って「風光明媚な土地で、昭和の体験を提供する」という軸をぶらさずに、お客様がお土産に購入できる商品を増やしたり、既存商品の段階的な値上げを行いました。その結果、現在は、売上高が取得時の約5倍に成長し、黒字化できています。


人々を笑顔にするビジネスを目指す|勇気をもって一歩目を踏み出そう


―この度は、改めて成約おめでとうございます。今後のビジョンを教えてください。


高畑さん

私たちは、価格競争で大手企業に勝つことはできません。そのため、古き良き体験に触れてお客様が得るベネフィットと価格のバランスを常に見極めていきたいと考えています。このまま売上高が伸長した場合は、スタッフを増やす計画もあります。


一方で、設備投資のタイミングも重要な問題だと認識しています。借入れをして設備投資を行い、さらに売上高を伸ばすのか。現状の規模を維持するのかの答えは出ていません。


どのような方向に進むにしても、お客様と、地域の人々を笑顔にするビジネスであり続けたいと考えています。お客様や、提携している農家の方々に支えられながらではありますが、老舗サイダー店の4代目として頑張っていきたいと思います。


―ありがとうございます。最後に、個人でM&Aを成約させたいと考えている買い手の方にメッセージをお願いします。


高畑さん

後継者が見つからない企業には、何かしらの課題が潜んでいます。その課題を自分の手で解決できるかどうかが取得の判断につながります。


そして、解決できるかどうかは、取得前に対象事業について「なんのために会社/事業を存続させるのか」「どうありたいのか」「お客様にどのような価値を提供するのか」を考えた上で、具体的な戦略や施策に落とし込んでいくと良いと思います。取得後の行動に関する準備は早めにしておいた方が良いです。


儲けは後からついてくるため、まずは戦略を立案した上で、勇気をもって一歩目を踏み出すことが大切です。公務員から経営者になり、自分で考えた施策が財務数字にすぐに反映される点は非常に面白いと感じています。逆も然りなので厳しい側面もありますが、私はM&Aをして良かったと心から思っています。


―ありがとうございました!高畑さんのビジネスの今後の発展を楽しみにしています!


「個人M&Aなら、M&Acompass」

M&Acompassは、個人M&Aの買い手に対する伴走支援です。これまでM&Aの専門家のサポートが十分に届いていなかった個人の買い手向けの伴走支援であり、個人M&Aの成約を目指すためのM&A戦略立案・案件探しといった初期的な工程からクロージングまでを支援するサービスです。


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