top of page

【M&Aの基本】株式譲渡とは?メリット・デメリット、プロセスを徹底解説

更新日:4月22日

株式譲渡は、M&Aの現場で古くから多用されているスキームです。株式譲渡は通常、株式を譲渡することで経営権を譲渡したり、あるいは譲渡先に一定の経営権の行使を可能にさせるために行われます。


また、株式譲渡は比較的シンプルに実行できるなど、M&Aの買い手にとって様々なメリットがあります。本記事では、株式譲渡の基本について現場のプロが解説します。


公式LINE

株式譲渡とは

株式譲渡とは

株式譲渡は、会社の株式を買い手に譲渡して経営権を譲渡したり、一定の経営権の行使を可能にさせるM&Aスキームです。株式譲渡を行うと、会社の株主が変わります。しかし、原則として、会社そのものに変更はありません。


株式譲渡では、原則として対象会社が保有する有形・無形の財産、債務、人材、組織、ノウハウ、ブランド、取引先などの全てを買い手が取得します。


事業譲渡との違い

個人M&Aの現場では、株式譲渡とともに事業譲渡という言葉もよく耳にします。事業譲渡とは、文字通り、会社の株式ではなく会社の事業を譲渡するスキームです。通常は、売り手の会社の事業の全てまたは一部を買い手の企業へ譲渡し、売り手の会社の法人格はそのまま残ります。


株式譲渡が株式の所有権とともに会社の所有権を譲渡するスキームであるのに対して、事業譲渡では、事業に紐づく有形・無形の財産、債務、人材、組織、ノウハウ、ブランド、取引先などのうち、売り手と買い手で合意したものを譲渡します。そのため、買い手の立場からすると、取得する対象を細かく決められる点が特徴です。


株式譲渡のメリット

株式譲渡のメリット

複数あるM&Aスキームの中でも、株式譲渡が選ばれる理由は何でしょうか。なぜ事業譲渡や合併ではなく、あえて株式譲渡なのでしょうか。ここでは、M&Aにおける買い手にとっての株式譲渡のメリットを解説します。


比較的スピーディーに行える

比較的スピーディーに行えることが株式譲渡の最大のメリットです。例えば事業譲渡を行う場合、事業の売り手の会社の株主総会で特別決議の承認が必要です。売り手の会社の株主の数が多く、株式が分散している場合など、特別決議が承認されない可能性もあります。


一方、株式譲渡であれば、売り手の会社の株式を買い手に譲渡すれば良いため、手続きがシンプルです。特に、対象会社の株主がオーナーとその家族のみといった場合、株式譲渡の手続きが非常にスムーズに進む場合があります


社員をそのまま引き継げる

売り手の会社の社員を買い手がそのまま引き継げるのも株式譲渡のメリットです。特に売り手の会社にハイスペックな人材がいる場合、買い手にとっての大きなメリットになります。


Googleの親会社であるアルファベットは、これまでに有能な人材を抱えるベンチャー企業の株式を買い取り、人材と事業を拡大してきていることは有名です。事業譲渡の場合も売り手の会社の人材を引き継ぐケースが多いですが、その場合は通常、売り手の会社が社員を解雇し、買い手と新たに雇用契約を締結する必要があり、手続きが煩雑になります。


取引先や金融機関を引き継げる

取引先や金融機関を引き継げるのも株式譲渡のメリットです。事業譲渡の場合、株式譲渡のように取引先や金融機関を引き継げず、新たに売買契約の締結や銀行口座の開設が必要になります。


売り手の会社が大企業と取引をしているケースなどにおいては、買い手との新たな取引を見送られる可能性もあります。同様に、金融機関から口座の開設を拒否される可能性もあります。


税務上有利である

株式の売り手が個人の場合、株式譲渡で売却益を得た際に税金を安く抑えられるというメリットがあります。個人の株式譲渡所得に対する税率は20.315%で、売り手の手元には譲渡代金の80%弱が残る計算になります。


また、株式譲渡では消費税が原則非課税であり、買い手が消費税を負担する必要がないというメリットもあります。一方、事業譲渡においては、対象となる事業に含まれる課税資産に対して消費税が発生します。


株式譲渡のデメリット

株式譲渡のデメリット

株式譲渡にはメリットとともにデメリットもあります。ここでは、特にM&Aの買い手にとっての株式譲渡のデメリットを説明します。


株主全員の合意形成が難しい場合がある

オーナー経営者だけが株主の会社、いわゆるオーナー企業の場合は、株式譲渡の実行が比較的スピーディーに行われる可能性があります。しかし、オーナー以外に複数の株主が存在している場合、株主全員の合意形成が難しくなる可能性があります


特に、株式譲渡に否定的な株主からは、株主譲渡に前向きな対応を期待することは難しいでしょう。そのようなケースにおいては、株主全員の合意形成ができなかったり、ひいては株式譲渡そのものが出来なくなる可能性があります。


簿外債務などを引き継ぐリスクがある

簿外債務などを引き継いでしまうリスクがあるのも株式譲渡のデメリットです。簿外債務とは、バランスシートに載っていない、文字通り帳簿の外に存在する債務のことです。


具体的には、未計上の買掛金や未払金、保証債務、未払社会保険料、損害賠償金などがあります。簿外債務は、デューデリジェンスを行っても見逃すケースがあり、株式譲渡が完了した後に発覚することもあります。簿外債務は、ものによっては会社の経営に大きなダメージを与えるため注意する必要があります。


経営権について

経営権について

ところで、株式譲渡を行う際に必ず検討すべきことがあります。それは、株式譲渡を行うにあたり、経営権をどうするかということです。特に買い手の立場においては、M&A対象企業の経営権についての明確なスタンスを持つ必要があります。


経営権とは?

経営権とは、文字通り会社の経営を行う権利のことです。一般的な株式会社の場合、経営権を持っているのは会社の経営者です。一方、会社の経営者は通常、会社の株主が選任します。つまり、経営者は株主の代わりに経営を行っているのであり、会社の真の経営権は会社の株主が持っているといえます。


会社の株主が複数いる場合は、より多くの株式を保有する株主が経営権をより行使できるといって良いでしょう。では、株主は経営権を行使するために、どの程度の株式を持つ必要があるのでしょうか買い手として取得する株式の割合を決める際の参考にしてください。


議決権3分の1超

議決権保有割合が3分の1超の株主は、株主総会の特別決議を単独で否決することが可能です。なお、特別決議の例としては「営業の譲渡」「会社の解散」「定款の変更」「減資」「合併契約の承認」などが挙げられます。


特別決議の成立には発行済株式総数の過半数を保有する株主が株主総会に出席し、その議決権の3分の2以上の賛成が必要となるため、議決権保有割合が3分の1超の株主の反対により否決できるのです。


議決権2分の1超

議決権保有割合が2分の1超の株主は、株主総会の普通決議を単独で可決することが可能です。


普通決議の例としては「取締役・監査役の選任」「取締役の解任」「剰余金の配当」などが挙げられますが、議決権保有割合で2分の1超を持つことで取締役を選任することができ、会社の実質的な経営権を確保することが可能になります。また、株主の意向に沿わない取締役に対しても、解任決議を単独で可決できます。


議決権3分の2以上

議決権保有割合が3分の2以上の株主は、株主総会の特別決議を単独で可決することが可能です。「定款の変更」「営業の譲渡」「会社の解散」「減資」「合併契約の承認」といった特別決議を単独で可決できます。


一般的な株式会社における経営権を考えた場合、普通決議を単独で可決したい場合は議決権保有割合2分の1超、特別決議を単独で可決したい場合は議決権保有割合3分の2以上の取得を目指すことになります。


M&Aにおける株式譲渡のプロセス

M&Aにおける株式譲渡のプロセス

一般的な株式会社の場合、株式譲渡はどのようなプロセスを経て行われるのでしょうか。ここでは、シンプルにオーナー会社の株式を第三者の買い手に譲渡するケースを見てみましょう。なお、当該オーナー会社は株式の100%をオーナーが保有しており、株式の譲渡制限が付いてなく、株券不発行会社であると仮定します。


株式譲渡についての合意形成

株式譲渡のプロセスにおける重要なステップは、株式譲渡についての売り手と買い手の合意形成です。株式譲渡についての売り手と買い手の合意形成なしに株式譲渡が成立することはありません。


ここで言う合意形成とは、どの会社の株式を何株いくらでいつどのように譲渡するかと言う基本的な項目についての合意形成です。売り手と買い手が直接話をして合意するケースもありますが、M&Aの現場では、売り手と買い手のそれぞれに代理人やアドバイザーが付くケースもあり、代理人やアドバイザーを通して交渉する場合もあります。


株式譲渡契約の締結 

株式譲渡についての売り手と買い手の合意が形成されたら、株式譲渡契約を締結します。株式譲渡契約書には通常、譲渡の対象となる株式、譲渡される株式数、譲渡額、決済日および決済方法などが記されます。


また、一般的な株式譲渡の場合、株式譲渡契約書に契約解除条項や損害賠償についての取り決め、売り手による表明保証などが盛り込まれるケースが多いです。なお、株式譲渡契約書は、M&Aの専門家や弁護士などに依頼して作成するのが一般的です。


決済

株式譲渡契約が締結されたら、決められた決済日に決められた方法で決済します。一般的には、売り手の指定する銀行口座へ買い手が譲渡金額を入金して決済します。


株主名簿の書換

株式譲渡契約が履行され、株主が入れ替わったら会社に対して株主名簿の書換を請求します。株主名簿の書換は「株主名簿記載事項書換請求書」を送付して請求します。


「株主名簿記載事項書換請求書」は通常、売り手と買い手の連名で記名押印します。これにより、株式の所有権が正式に買い手に移転します。


まとめ

本記事では、株式譲渡の基本について、株式譲渡のメリットとデメリットや実際の株式譲渡のプロセスなども含めて解説しました。


株式譲渡の最大のメリットは、売り手と買い手が合意すれば、比較的速やかに実施できることです。その前提で重要なのは、いかに素早く「売り案件」の情報を入手できるかです。可能な限りたくさんのアンテナを張り巡らし、情報収集を行う。そして優れた情報を入手出来たら、可能な限り速やかにアプローチする。M&Aにおいてスピードは非常に重要なファクターです。


特に買い手においては、常にスピードを意識して活動するように意識してください。これが、良い案件を取得するためのコツとなります。


「個人M&Aなら、M&Acompass」

M&Acompassは、個人M&Aの買い手に対する伴走支援です。これまでM&Aの専門家のサポートが十分に届いていなかった個人の買い手向けの伴走支援であり、個人M&Aの成約を目指すためのM&A戦略立案・案件探しといった初期的な工程からクロージングまでを支援するサービスです。


「M&Acompass」では、毎週さまざまなテーマでセミナーを開催しています。


また、伴走支援の一部を体験していただく趣旨で、オンライン無料体験会も開催しています。個人M&Aに関する疑問や課題に対して、現役のM&Aコンサルタントが提案・アドバイスさせていただきます。オンライン無料体験会もお気軽にご活用ください!


セミナー情報

無料体験会




閲覧数:46回
1.png
2.png
3.png
4.png
現役M&Aアドバイザーがオススメ.png
bottom of page