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個人M&Aで失敗しないための秘訣は? 4つの事例から学ぶ

更新日:11月18日

2019年6月に大きな話題を生んだ「老後2,000万円問題」を受け、その解決策として個人M&Aを実行して経営者になる事例が増えています。


実際にテレビでも個人M&Aを実行し、買収後に大きく売上を増加させたという事例も紹介され、日を追うごとに注目度が高まっているようです。


しかし個人M&Aは思わぬところから失敗してしまうケースもあります。


そこで本記事では、個人でM&Aで失敗しないための秘訣を解説するために、実際にあった4つの事例から学んでいきます。



個人M&Aの失敗事例4選

それでは早速、個人でM&Aを実行し失敗してしまった事例を4つ紹介していきます。


ここでは失敗事例を紹介するだけでなく、以下の2つの観点で事例を分析していきたいと思います。

  1. 失敗の原因

  2. 具体的な解決策

それでは以下で失敗事例と解決策を紹介していきます。


事例①伝統を守り続ける鋳物会社


【買い手の状況】 東京で大手商社に勤めていたAさんは40歳。今後の人生設計を大きく転換するため、M&Aで地元愛知県の鋳物会社を買収することにします。 元々独立志向があったAさんは、いつかは地元に帰り起業したと考えていたため、後継者不足で悩んでいる鋳物会社に目を付け、M&Aの実行に踏み切ります。 Aさん自身は商社マン時代に鋳物を扱ったこともあり、その経験を活かし買収した会社の伝統を守りながらさらなる会社の成長を意気込んでいました。


【売り手の状況】 愛知県の三河地方にある鋳物会社のB社は、先祖代々続くこの会社を守り従業員も30人を抱える会社です。 B社の経営者には3人の娘さんがいましたが、全員大学卒業後に愛知県を離れてしまい、後継者不足に悩まされていました。 先祖代々続く伝統ある会社と今いる従業員30人の生活も守りたかったですが、自身の健康上の理由からこのまま経営を続けていくことが難しくなりました。 当初は従業員の中から跡継ぎを抜擢しようと考えていましたが、近年は中国をはじめとするアジアの企業の勢いに押され売上が落ちてきていたため、社外から新しい風を吹かせてくれる買い手を探していました。


この事例は結局AさんによってM&Aが実行されました。


しかしAさんは買収後に思わぬトラブルに巻き込まれることになります。


実はこのB社は他社(複数)の連帯保証人となっており、ある債務者が債務不履行となりAさんが突然債務を負うことになってしまいました。いわゆる簿外債務の発覚です。


この場合、連帯保証の契約をしたのは前社長ですが、M&Aを実行したことによりこれら債務もAさんは引き継ぐことを把握していなかったのです。


財務諸表にはこれらの債務の記載がなかったため、それを知らずにM&A実行に踏み切ってしまい、買収直後に大きな出費が発生することになりました。


この事例におけるM&Aの失敗要因は以下のとおりです。

  • 財務諸表の確認不足

個人のM&Aでは成約までに様々な項目を経て行われますが、その中でも特に重要な部分は買収対象企業の財務諸表のチェックです。


財務諸表は買収対象先と初回面談を実施した後に確認し、異常値や気になる点をチェックし気になる点があれば買収対象先に質問をして、回答を踏まえて修正版の財務諸表を作成します。


この結果を踏まえて企業価値評価を行い、買収希望価格を提示して条件に合意できれば基本合意書を締結することがセオリーです。


今回のAさんの場合は、初回面談の後に財務諸表を受け取りましたが、中身をよく確認せず異常値に気づけませんでした。


また通常、基本合意後に実施するDD(デューデリジェンス)も行っておらず、買収のリスクを把握してないかったことも大きな要因です。


この事例を踏まえての具体的な解決策は以下の2つです。

  • 基本合意前に財務諸表で気になる点がないかよく確認する

  • 基本合意後のDDは必ず実施する

なおDDの実施は任意となっていますが、個人でM&Aを実行する場合はリスクの発見が難しいため、なるべく実施した方がいいでしょう。


個人M&Aの場合、簡易的かつコストを抑えたDDでも十分です。


費用は30~50万円ほどですが、専門家がしっかりとチェックを実施してくれるため頼るところは頼る姿勢が大事ということでしょう。


事例②販売網拡大を狙う食品加工会社


【買い手の状況】 Cさんは新卒で国内証券会社に勤務した後、外資系ベンチャーキャピタルに勤務していた現在33歳。 証券会社時代は株式の新規公開支援やM&Aのカバレッジ業務を手掛け、その実績を掲げて外資系のベンチャーキャピタルに転職します。 しかし、いつかは独立したいという夢があったため、外資系ベンチャーキャピタルを退職し起業することにしました。 そこで目を付けたのは地元山形県にある食品加工会社のD社。 ゼロから起業することも考えていましたが、地元山形の産業を守り、世界に誇れる会社にしたいという想いからM&Aを実行することにしました。


【売り手の状況】 D社は山形県山形市に本社を置き、創業から60年続く漬物などの加工食品を製造する会社です。 D社の主要顧客は県内のスーパーのみ。県内の人口は減少傾向で、これに伴い売上は右肩下がりで経営改善が急務となっていました。 D社としては県内だけではなく県外にも販売網を作ることや、ネット販売などで日本全国にも販売網を広げたいと思っていました。 しかしそのようなノウハウは社内にはなく、経営を大きく変えられる人材を社外から迎え入れ、会社を立て直すことを決めます。


この事例は証券会社と外資系ベンチャーキャピタルに勤務し、人脈もあり財務知識や税務知識に長けていたCさんにすぐに白羽の矢が立ちました。


D社としても、地元山形出身の方ということで安心して経営を引き継げると意気込んでいました。


そして実際にM&Aが実行され、CさんがD社の経営者となり会社を立ち直すことになります。


しかしCさんはこれまでD社が行ってきた経営方針を一新し、徹底的なコスト削減や効率重視の経営方針に切り替えたため、従業員の反感を買うことになってしまいます。


結局1人、また1人と従業員が退職してしまい、販売網の拡大どころではなくなってしまいました。


この事例におけるM&Aの失敗要因は以下のとおりです。

  • 従業員とのコミュニケーション不足

従業員がいる会社にM&Aを実行する場合、経営陣に対する配慮も大切ですが、それと同じくらい従業員の方との信頼関係の構築も大切です。


従業員の立場に立ってみれば、経営者の交代は一大イベントであり、ストレスのかかるものです。


特にD社の前社長は60代、Cさんは30代で従業員の平均年齢は46歳で、突然東京から来た若者にこれまでのやり方を一新されてしまえば反感を持つのも納得できます。


この事例を踏まえての具体的な解決策は以下とおりです。

  • 買収前に従業員とのコミュニケーションをとっておく

具体的には、買収を検討することになった経緯や会社の現状を理解してもらい、これを踏まえて自分はどのような経営方針で進めていくのかなどを従業員に示しておくことです。


M&Aは実行して終わりではなく、本当の勝負は実行後だということをよく理解しておきましょう。


事例③美容系ECサイトを運営する法人


【買い手の状況】 Eさんは現在WEBデザイナーとしてフリーランスで活動する埼玉県在住の28歳。 これまでWEBデザイナーの業務しかしてきませんでしが、いつかは会社を経営してみたいという夢があり、M&Aのマッチングサイトに登録しました。 M&Aを選択した理由は、ゼロからの起業は資金が必要かつ、マネタイズまで時間がかかるためM&Aで会社を買う方がいいとの判断したためです。 そこで目を付けたのは、美容系商材を扱うECサイトを運営するF社でした。 Eさんは以前、ECサイトを運営する会社でも勤務していた経験もあり、売却希望価格も300万円と手の届きやすい金額だったためM&Aを実行することにしました。


【売り手の状況】 F社は埼玉県に本社を置く企業で、元々は社長が個人で運営していた美容系商材を扱うECサイトでしたが、売上が伸びてきたため数年前に法人化した会社です。 しかし近年は変化の激しいWEB業界の波にさらされ、売上が落ち込み在庫を抱えるビジネスであることから赤字に転落。 社長自身も様々な施策を実施してきましたが、どれも空振りに終わりこのまま経営を続けていくことは困難であると判断し、M&Aで買い手を探していました。


F社の運営するサイトは、デザイン面で課題があったためWEBデザイナーとして経験豊富なEさんにとってはピッタリの案件でした。


F社の社長もEさんであればすぐに黒字転換できると信じM&Aに合意します。


しかし蓋を開けてみると、このECサイトは問題が多く、そもそもマネタイズの仕組みから大きな課題がありました。


先述のとおり、このECサイト運営は在庫を抱えるビジネスモデルのため、注文が入り次第発送しなければならず、常に適正在庫を持つ必要があります。


しかし注文が安定して入ればいいですが、このサイト自体がWEB上で戦うための力がなく、販売数の減少を買収後でも止められませんでした。


加えて仕入れは契約で毎月一定数を仕入れることになっており、在庫だけが膨らんでいき、終いには仕入れを止めて取引先と契約を解除することになってしまいました。


この事例におけるM&Aの失敗要因は以下のとおりです。

  • マネタイズの仕組みの理解不足

そもそもですが、M&A実行前にマネタイズの仕組みを理解しておくことはとても重要であり必須作業です。

しかしEさんはマネタイズの仕組みを理解せず、「ECサイトのデザイン面に課題がある」「売却希望価格が手を出しやすい」という理由だけでM&Aに踏み切ってしまいました。

この事例を踏まえての具体的な解決策は以下とおりです。

  • マネタイズの仕組みを理解し適切な企業価値評価を行う

どのようなM&Aを実行する中で、マネタイズの仕組みとそれを踏まえた企業価値評価を行います。


今回のF社のように在庫を抱えるビジネスモデルの場合「なぜ在庫を抱えることになっているのか?」「ECサイトが抱える問題点は?」の2つを把握しておく必要がありました。


確かに300万円でECサイトに加えて会社も買えるのであれば、お得感がありますが実際には問題だらけの案件です。


結果的に300万円という価格であっても、このマネタイズのモデルはとても難しく明らかな高値掴みとなってしまいました。


個人でのM&Aの場合、金額だけ見るのではなく、適切な企業価値評価を行った上でM&A実行に踏み切りましょう。


事例④そもそも仲介業者が相手にしてくれなかった


【買い手の状況】 Gさんは横浜市に住む大手半導体メーカーの営業部として働く29歳。 大手半導体メーカーということもあり、安定した給料がもらえ自身も近々結婚を考えていました。 しかしGさんの勤める会社が経営不振から希望退職者を募ることになり、Gさんも他人ごとではないと思い独立を視野に入れることにします。 独立といってもゼロから起業するにはお金も時間もかかるため、最近話題の後継者不足に悩む会社にM&Aの実行を考えます。 自身はM&Aの知識はもちろん、知人にM&Aに詳しい人がいるわけでもなかったため、大手M&A仲介業者に依頼することに決めました。


結局このGさんはM&Aの仲介業者に案件を紹介されることなく時間だけが過ぎていきました。そもそも大手M&A仲介

業者は個人レベルのM&Aに対して案件を紹介することは稀です。


個人相手のM&Aは規模も小さく、M&A仲介業者としても売上への貢献度も低いため本腰を入れて案件を紹介してくれることはほぼありません。


M&A仲介業者の立場となってみれば、小規模の案件かつ個人が2度3度M&Aを実行することもないため、個人に対して手厚い支援をすることは考えにくいです。


つまり個人M&Aを実行する場合は、M&A仲介業者に頼ることは正しい選択肢とはいえません。


この事例における失敗要因は以下のとおりです。


  • 小規模のM&A案件を仲介業者に依頼してしまった


個人のM&Aで仲介業者を頼ることは決して間違いではありませんが、Gさんのように案件を紹介されないまま時間だけ経過するケースはよくあります。


M&Aの仲介業者を利用すればプロが手続きを教えてくれるだけではなく、適時アドバイスももらえ安心して任せられるメリットもあります。


ただし当然ですが、M&Aが成約した場合は手数料が発生します。一般的にはM&Aが成約したタイミングで手数料を支払う成功報酬型が多いですが、最低でも数百万円から数千万円以上の費用がかかります。


この点からも、仲介業者を利用することは個人M&Aには向いていないといえますね。


個人M&Aを自分の力だけで成功させるポイントは以下のとおりです。

  • M&Aについて勉強する

  • 必要に応じてM&Aの専門家に頼る

まずはM&Aに関する知識をつけるために自身で勉強しましょう。勉強する内容は財務知識や会社法の一部、税務の一部です。


書籍やネットで情報収集することもいいですが、効率を重視するためには個人M&Aを支援する企業のサービスを利用することも選択肢の一つですね。



必ずチェック! 個人M&Aで失敗しないための3つのポイント

これまで個人M&Aにおける失敗事例とその解決策を見てきましたが、ここではさらに踏み込んでいきたいと思います。


おそらく多くの方はM&Aを実行することは初めてだと思います。実は個人M&Aで失敗してしまう方の行動には共通点があるのです。


以下で個人M&Aで失敗しないために、必ず実施またはチェックしておきたいポイントを3つ挙げてみました。


M&A実行の初期段階では相手への配慮が最も大切


個人M&Aの多くはBatonzやTranbi、スピードM&AといったM&Aプラットフォームで対象企業を探すことが一般的になってきました。


M&Aプラットフォームを活用することで、最低限の条件さえ決めれば誰でも容易に案件を探せます。


そして自分の興味ある案件が見つかれば、買収対象企業にコンタクトを取ることになります。ここで初めて相手(買収対象企業)と接することになるのですが、必ず相手への配慮を欠かすことがないようにしましょう。


はじめから「売上はいくらですか?」や「会社の資産はどれくらいありますか?」など聞かずに、まずは自分のことを知ってもらい相手の人となりを知る目的でメッセージのやり取りから進めます。


企業にとって売上や利益、資産、負債については、とてもデリケートな部分ですので、これらは信頼関係が構築できてから聞くようにしましょう。


買収対象企業のマネタイズの仕組みを知る


先述の「美容系ECサイトを運営する法人」のM&Aで失敗してしまった方の事例を紹介しました。


この方の失敗原因は、買収対象企業のマネタイズの仕組みを理解していなかったことです。


個人M&Aの対象となる企業は業種が様々で、在庫を抱えるビジネスモデルであったり、問い合わせから売上が立つまで数カ月がかかるなど、マネタイズの仕組みは異なります。


当然、個人M&Aであっても会社を買うことがゴールではないため、買ってから売上を継続的に上げられるかという点も考えておく必要があるでしょう。


そのため買収対象企業のマネタイズの仕組みを理解することは必須作業となります。


具体的にどのようにしてマネタイズの仕組みを理解するのかについて、以下の6つのポイントにまとめました。

  1. 仕入から販売までの流れ

  2. 仕入れをしてから自社でどのような付加価値を付けているのか

  3. 仕入先や顧客の特徴

  4. 商品やサービスの販売先

  5. 集客の方法

  6. 業界の買収対象企業の立ち位置

全ての企業に当てはまるものではないですが、少なくとも上記6つについては理解しておく必要があります。


この段階では細かい数字などを気にしなくても大丈夫ですので、少なくとも「どこから仕入れて、自社でどのような付加価値をつけて、誰に販売するのか」などは理解しておきましょう。


加えて顧客の特徴、具体的には性別や年齢層、生活スタイルまで理解しておくといいです。


またマネタイズの仕組みを理解する過程で疑問点があれば、それを質問シートにまとめて買収対象企業に質問をします。


マネタイズの仕組みを理解しないまま、財務諸表の確認や企業価値評価に進まないようにしましょう。


穴が空くほど財務諸表をチェックする

ここからは少し専門的な内容になりますが、財務諸表の見方を理解した上で中身をしっかりと確認しましょう。


そして穴が空くほど財務諸表を細かくチェックします。


実はマネタイズの仕組みを理解しないことと同様に、財務諸表をしっかり確認していなかったことで個人M&Aで失敗するケースはとても多いです。


しかし財務諸表は会計学の知識がないと、理解することは難しいため、事前に勉強して勘定科目などを理解できるレベルにはしておきましょう。


そもそも財務諸表には以下の3種類が存在し、これらを別名財務三表とも呼ばれます。

財務諸表には会社の資産と負債を表す貸借対照表、会社の利益や必要経費が確認できる損益計算書、会社運営におけるお金の流れを確認するキャッシュフロー計算書があります。


これらの中身をしっかり分析し資産や負債、お金の流れを把握します。


中には「売上を求めるほど赤字になる」といった会社も存在します。このような状況では売上を立てる前に、コスト削減や工数削減などを実施して利益率を一定に保つ必要があるでしょう。


買収対象先とコンタクトをとり、初回面談を実施してNDAを締結すると財務諸表が受け取れますので、中身をよく見て異常値があれば先ほど同様に質問シートにまとめ、買収対象先企業から回答を得るようにします。


ここで財務諸表をしっかり確認しておかなければ、失敗事例で触れた買収後に「簿外債務」が発覚するということもあるため特に時間をかけて行いましょう。



知識を付ければ個人M&Aで失敗しない

それではここで個人M&Aで失敗しないためのポイントを改めてまとめてみます。

  • M&Aプラットフォームを活用する

  • 財務諸表を理解できるようにしておく

  • 必要に応じてプロや専門家に頼る

買収先が個人事業主や従業員が5名以下の会社であれば、比較的組織構造が複雑ではなく、取引先も限られていることからM&A仲介業者を頼らなくても問題なくM&Aを成功させられます。


先ほどの失敗事例の部分でも触れましたが、そもそもM&A仲介業者は個人を相手にしてくれないことが多いです。


そのためM&Aプラットフォームを活用して、案件を探した方が合理的でしょう。


なお、M&Aプラットフォームを利用する際は、可能な限り自身の登録情報を充実させておくことが大切です。


登録した経緯や業種、買収予定資金など回答できることはなるべく詳しく書いておきましょう。登録情報を充実させておくことで、売り手からの連絡も来やすくなります。


そして会社運営において最も大事な部分でもある、財務諸表については理解できるようにしておきましょう。


繰り返しになりますが、財務諸表を正しく理解できなかったことによる失敗事例はとても多いです。数字を見て異常値に気づけることが理想です。

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